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南十字星


星と星とを繋げて夜空に絵を描く、古代人はなんと想像力豊かなんだろう。僕たちは漠然と見ているけど、夜空にはいくつもの星座が散らばっているんだな。
昔、「髪の毛座」という名前を聞いたときに僕は「これぞ想像力の極致だ」と思ったことがある。髪の毛1本を星座にするなんて・・・
ところが、後で髪の毛座の星座図をみるとそこには「ヅラ」みたいなものが描かれているではないか。これはかなりショックだった。思い描いていた夜空に横たわる1本の髪の毛が実はカツラの格好だったなんて。
調べてみるとヅラではなく、エジプト・プトレマイオス3世の妃ベレニケ2世の後ろ髪なのだそうだ。それにしても7つ8つの明るい星を繋いで王妃の髪になぞらえるのだから十分想像力豊か。


まあ、夜空を見上げて「あ、あんなところに髪の毛座が」と叫ぶことはまずないだろう。メジャー所の星座には敵うまい。例えば・・そうねぇ、さそり座とか(笑)
自分の星座なのに僕はさそり座を意識して見たことがなかった。南が開けている場所にいなかったからか、と思ってたら日本でも代表的な夏の星座なんだな。つくづく星の見えない自分の環境を痛感。
しかし、僕は生まれて初めてひと目でそれとわかるさそりに出くわした。場所はインドネシアの小さな島。夜、浜に出ると南の空にくるっと尻尾を巻いた大サソリと赤色の恒星アンタレスが。惚れ惚れするほど「いいサソリ」である。


さて、今回のサモアの旅は僕にとって初めての南半球。南半球といえば代表的なのはあの星座でしょう(笑)そう、南十字星。
この星座は色々な国(もちろん南半球)の国旗にも描かれている。オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル・・・そしてサモア。したがって星座の形もしっかり頭に入っていた。
降り続いていた雨が上がった晩、僕は海辺のバンガローのテラスに出てみた。夜の海からすこし視線を上げると・・・あ、南十字星。簡単に発見。僕は近視(および老眼)だから明るい星しか見えないのだけれど、あるいは星座を見つけるにはその方が良いのかもしれない。余計な星が見えないから。


それにしても、ぱっと見上げたところにお目当ての星座があるなんて・・・鳥肌がたつほど感動。手の震えを抑えつつ、三脚も使わず手持ちでシャッターを切った。(すみません雑で)余計な星々が写っていない分、僕の見た目に近いと思う。
ポインター(目印)となるケンタウルス座のアルファとベータ、ふたつの明るい星の上に小さな十字架が見える。十字架の長辺を縦として、左隅にはコールサック(石炭袋)と呼ばれる暗黒星雲があるらしいが肉眼では確認できず。右隅のオレンジ色はイプシロン星、南十字星の国旗には必ず記されている。


初めて見る南十字星は、予想を越える神々しさで天球に張り付く十字架であった。



2019年5月記


今日の一枚
” 南十字星 ” サモア・マニノア 2019年




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