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日傘日和


ウズベキスタンに入ると日傘をさして歩いている人が多くなった。お肌を気遣う女性の方が多いかな。いや、男性にも日傘派はいる。先日話した乗り合いタクシーの運転手は、子供用の赤い傘をさして客引きしていたっけ。


それもそのはず、カザフスタンのアルマトイに着いたときには肌寒いぐらいの春の気候だったのに、ウズベキスタンはまるで真夏のような砂漠の日差しだ。空気もカラカラに乾燥していて僕は喉の調子が・・・ゴホン、ゲホゲホ。サマルカンド、ブハラと移動するにつれ僕の風邪は悪化の一途をたどる。そして、ブハラで僕はとうとう高熱でダウンした。宿のオーナーはとても気が利いて、僕を良い感じで隔離してくれた。これで、夜中に遠慮なく咳ができる。せっかく古都ブハラにいるのに。「旅先で絶対に体調を崩してはいけない。旅が台無しになる」というのを実感した。それでも写真を撮らなければ・・・


通りに出ると強烈な日差し。暑い。足元がふらふらして倒れそうだ。やはりベッドで横になっていた方がよかったのか?日干し煉瓦の赤茶けた街並みの中を、白いブラウスでキメたウズベキスタンの娘さんたちが日傘をさして歩いてくる。砂漠の蜃気楼ではないだろうな。これは陽炎立ち上る秋葉原の歩道をシックな日傘を差したメイドさんたちが並んで歩いているのを見たときぐらい「強い絵」だった。ゴホゴホ。
熱があるからか喉が渇く。水だけでは足りず市場でトマトを一袋買い、その場でかぶりついた。うまい。無心でトマトを頬張っている僕を見て売り子のおばさんたちが笑ってる。笑うがいいさ。僕は今それどころじゃないのだ。水を・・水分をくれ。


昨夜も咳でよく眠れなかった。朝9時だというのに今日も太陽はギラギラ。外に出るには勇気がいる。そこで僕は思いつく。たしか荷物の中に折り畳みの雨傘があったはずだな。携帯用のやけに柄の短い傘だったが今日はこれをさして歩こう。宿の宿泊客からは「カッコいいね」とからかわれたが背に腹はかえられないよ。しかし、地元の人でそれを笑う人はいなかった。ここでは日傘は必需品なのだ。空気が乾燥しているから、傘で日陰を作ってあげると体感温度は全然違う。恥ずかしながら僕は日傘の有効性に生まれて初めて気がついた。ただ、日傘にも1つ弱点が。片手がふさがるから写真が・・・その・・すんごく撮りにくいんですな。ゲホッゲホっ。



2018年8月記



今日の一枚
” 日傘日和 ” ウズベキスタン・ブハラ 2017年




fumikatz osada photographie