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雨ニモマケズ


昨年のインドネシアに続き南太平洋のサモアに行ってきた。「南は癒しの場所、最後の切り札としてとっておこう」という己の誓いも空しく、その切り札を最近使いまくっている。それだけオセアニアという地域に僕が今まで見たことがないものがあったということかな。


赤道に近い常夏の国。3月は雨季のに当たるらしい。そこまでは下調べしたものの、私サモアの雨季を少々舐めておりました。毎日毎日雨ばかり。サモアの3月は東京の6月のざっと3倍の雨が降るのだそうだ。納得。
とはいえ、ずっと宿に篭もっていたのでは写真は撮れない。だから傘を持って出かける。いや、朝は良いお天気なのだ。雨の気配なんて全くない。ところが、突然灰色の雲に空が覆われてポツポツと来て、まもなく土砂降りになる。かと思えば30分ほどで止んで、その後は2時間おきに雨雲が来て、完全に雨が上がるのは日が落ちる頃。ものすごい湿度。なんともフォトグラファー泣かせの天気だ。
もちろん、地元の人たちは心得たもので。雨が降ればファレ(屋根と柱の家)の下で雨宿り。下校中の生徒たちは雨なんかへっちゃら。傘もささずに歩いている。まあ、この蒸し暑い雨季をやり過ごすことができないようじゃサモアになんか住めないか。


地球温暖化で夏の気温が上がり、熱中症予防の為に冷房を使えと日本では毎年のように報道されるけど、昨年のインドネシアの離島もサモアも、シーリングファンを使ったり窓を開ければそこそこ涼しかった。日本の異常高温の原因は都市熱によるところが大きいんじゃないかな。冷房を使い、内燃機関の車が増えればますます暑くなる。都市の熱は風に乗って近郊を暖める。かといって、冷房を使うなというレベルではもはやない。
一方、ウポルとサバイイという2つの大きな島で構成されるサモアはその大部分が手付かずの自然。山に降った雨は湧き水となり無数の小川や滝になる。色とりどりの草花が咲き乱れ、椰子の木が生い茂る。まさに動植物にとっては楽園だ。雨ニモマケズと歯を食いしばるのではなく、雨が降ったら降ったサ、と受け容れるのがポリネシア流の自然との向き合い方なんだな。



2019年4月記



今日の一枚
” 下校時間 ” サモア・シウム 2019年




fumikatz osada photographie