<< magazine top >>










クリケット


サッカーは好きだけど野球にはあまり興味がない。だから毎年このシーズンは憂鬱。カーラジオから流れる放送はあいも変わらずプロ野球のナイターばかり。春休みと夏休みにはNHKが高校野球の全試合を放送している。僕は問いたい「どんだけ野球が好きなんですか?」と(笑)
しかし、大きな声じゃ言えないが・・・僕もかつて西武球場のライトスタンドでメガホン振っておりましたし、地元の高校を応援してました。学校の休み時間は軟式テニスのボールを腕のバットで打ち、廊下の隅に置いた教科書のベースにスライディングを食らわし、密かに少年野球チームにも所属しておりました。ま、日本人と野球は切っても切り離せない関係にあるというわけですな。
けれども、自分たちの当たり前は世界の当たり前ではない。世界中どこに行っても野球が認知されているわけではない。


そこで今日のお題「クリケット」という球技である。競技人口はサッカーの次に来るほどと言われるから野球に比べてずっとメジャーだ。イギリス発祥のスポーツなのでかつての英連邦の国々すべてで行われている。バングラデシュでもインドでも空き地があれば男子はみなクリケットに興じている。そう、僕が子供の頃、友達数人集まれば必ず野球が始まったのと同じように。
見かけは野球に似ている。ボウラー(=ピッチャー)が投げるボールをバッツマン(=バッター)はボートのオールのようなバットで打つ。「お、もしや野球のルーツなのかな?」と思ったが、ルーツ説、親戚説など諸説あるみたい。


しかし、調べてみるとクリケットのルールは野球とずいぶん違う。野球の4つのベースの代わりにウィケットという3本棒がフィールド2ヶ所に突き刺してある。ひとつはバッツマンの後ろ、もうひとつはボウラーの前。ボウラーは助走をつけて思い切りボールを投げる。 投球はノーバウンドでもワンバウンドでもかまわない。「あんなに全力投球したら肩がボロボロだな」と思ってたら心配無用、クリケットの投手は6球ごとにローテーションで代わるそうだ。
投球がバッツマンの後ろのウィケットに当ったり、打球がノーバウンドで捕球されたりするとバッターアウト。従ってバッツマンはウィケットに当てられないように投球をカットするか打ち返さなければならない。


攻撃側はボウラー側のウィケットにはじめから次打者を配置し、野球でいう満塁の状態でスタートする。バッツマンが打ったらお互いにもう一方のウィケットに向けて走る。1回入れ替わったら1点。10アウトでチェンジ。
ちなみにクリケットは楕円形のフィールドの真ん中でプレーするからバッツマンは360度どの方向に打っても良い。守備はボウラーとウィケットキーパー(=キャッチャー)を含む11人が素手で守る。この辺が野球育ちにはいまひとつイメージが湧かない。


しかし、クリケットについての知識を多少なりとも頭に入れると、バングラデシュやインドで遭遇する風景もすんなり理解できる。空き地には必ず木の枝が3本、ウィッケットとして突き刺さっている。草クリケットの残骸(笑)若者たちは試合を中断しバットを持って寄ってくる。「このポーズでおなしゃすっ」とスイングのストップモーションで写真をせがむ。


彼らにとってはクリケットが当たり前。ということは、シーズンに入るとクリケットの中継ばかりで頭にきている輩もいるということか?クリケットに殿堂や名球界はあるのか?イチローみたいな選手はいるのか?と考え始めるとなんだか別の大陸を発見したような気持ちになった。



2015年4月記



今日の一枚
” バッツマン ” バングラデシュ・ラッシャイ 2015年




fumikatz osada photographie