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みごとにメキシコだった


テキサス州エルパソとメキシコのファレスは寄り添うように佇む「双子の街」。2つの国を隔てているのは「リオグランデ」。直訳すると「大きな川」だ。
ところが実際の川は枯れ果てていてまるでドブ川のよう。リオグランデという名前はここではジョークにしか聞こえない。けれども、国境警備の必要性かその川には不似合いなほどの大きな橋が架かっていて、意外なほど多くの人や車が両国の間を往来していた。


「アメリカの隣の町は『アメリカ風の街』なんだろうな、まさか、いきなりメキシコが始まるなんてことはあるまい」という僕の予想は軽く裏切られ、橋の袂、国境ポストの警官がさっそく賄賂を要求してきた。プロフェッショナル機材(カメラ)税US$10ナリ。「おいおい、そんな税金聞いたことがないぞ」とすったもんだしていると、たちまち他の警官5、6人に囲まれ「払え!」と命令された。

払わないと入国させないと脅かされたので渋々払う。10ドル札を僕の手からむしりとった警官は、それを無造作に机の上のペーパーウエイトの下に挟んだ。そこには多くの「犠牲者」たちの札が無惨に挟まれていた。


夜になるとファレスの街にはマリアッチたちの歌声が響き渡る。遠くに目をやればエルパソ側の山肌に「テキサスの星印」のイルミネーションが見えるのに、ファレスはみごとなまでにメキシコだった。


2005年5月記



今日の一枚
”クラブ・エル・ガリート” メキシコ・シウダードファレス 1995年


何の見返りも求めない その1




fumikatz osada photographie