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アトランティックシティ その2


カジノ法案の名前を聞いた時に、あのアトランティックシティのことを思い出した。懐かしい思い出を掘り出してくれてありがとう。でもね、カジノなんて20世紀の遺物だ。今はネット上で瞬時に何千万という金が動き、バーチャルな世界に人が集う時代。世界は確実に「現場主義」ではなくなっているんだよ。
相変わらずの土建屋政治、大手ゼネコンとのズブズブの関係で箱物を作りたいだけなんだろうな。
外国の資本と外国人観光客を見込み、他方、日本人に対してはギャンブル依存症対策のために入場料6000円を徴収するというなんともマゾヒスティックな内容だ。どこの国の誰のための法案なんだろうね?


敷居を上げるのは本当は依存症対策ではなく、法案に対する国民の悪いイメージを払拭するためのモーションなんだろう。
この法案、正式には統合型リゾート推進(IR)法案というのだそうだ。カジノなんていうのは対象のごく一部で、その後ろにはとんでもない箱物行政が隠れているというわけだ。大阪万博とかかな?オリンピックの後の大きな箱物は。その免罪符を得るための法案なんだろうね。
とすればカジノ解禁に関する法案だと勘違いさせておく方が与党にとっては好都合なのかもしれない。依存症対策きちんとやりますよ、と言っておけばなんとなく「そこまでフォローするなら成立させてもいいか」と騙される人もいる。
しかし、本当に依存症対策なら現在許されているギャンブルの状況をまずチェックすべきだろう。日本のギャンブル依存症患者数は既に世界でも多いほうじゃないのかな。アメリカも欧州も駅前でスロットマシンはできないのだから。ところがそっちはなぜかスルー。東京競馬場の入場料は絶対に6000円にはならないでしょ。メディアもそこにはあまり触れない。競馬もパチンコも大切な広告主だからだ。


話は変わるが、最近日本に旅行に行ったことがあるという外国人に会うことが多くなった。中には3回、4回というリピーターもいる。先日、成田発の飛行機でとなり合わせた外国人女性は周遊券で富士五湖から神戸の範囲を重点的に周ったという。桜の季節にあわせようとしたけど、ちょっと遅かった。「御殿場」「三島」淀みなく日本の地名が出てくる。写メを見せてもらう。京都で着物を着た彼女が写ってる。次のカットでは大阪でたこ焼きを食べてる。神戸牛のステーキのテーブルフォト。驚くのは日本らしい場所を詳しく下調べしていることだ。(まあその「日本らしさ」というのは人それぞれで、ゲームセンターで太鼓たたいたり、ダンスを踊りたいという若者もいた)
日本の文化に魅せられたという女性は何度も来日して、日本語学校に通っている。毎年スキーやスノーボードをやりに来る外国人は、僕よりも多くの日本のスキー場を知っていた。


「爆買い」なんて言葉が流行った。「おもてなし」を自負する国が外国人観光客に対して使うには、余りにも品がない言葉だと僕は思うのだが・・・まあ、それはさておき、観光客がいつまでも爆買いをするために日本に来ていると思ったら大間違い。彼らは政治家のみなさんが思っている以上にコアな日本、しっかりした文化基盤の上に古くから存在し続けているものを求めているみたいですよ。
やがて、東京湾のカジノにペンペン草がはえるころ、横浜中華街の片隅から日本人も乗れる無料送迎バスがでるのかな。その時は喜んで利用させてもらおう。まあカジノには入らないけれどね。



2018年5月記



今日の一枚
” トワイライト ” アメリカ・ニューヨーク 1991年




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