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バングラデシュと水の深ーい関係 その2


一方、バングラデシュ中どこでも簡単に人々がアクセスできる水辺は池だ。おおよそ町内にひとつぐらいの頻度で見られる。人工的に作られた溜池なのか、雨季の置き土産で自然にできたものなのか僕には解らない。畔にはコンクリートの足場が作ってあり、近所の人たちが来て川と同じように洗濯をし、沐浴をしている。住宅地の中の池とそれを取り巻く椰子の木々は静かで美しいバングラデシュの現風景。しかし、残念なことに池にはごみが無造作に捨てられている。旅人の僕から見れば「え、まさかこのゴミの浮いた水に・・・」と思うような池に、おばちゃんたちは何のためらいもなく入って行き洗濯を始める。若者は首まで浸かり沐浴を始める。池の水で口をすすぐ。「あああ」子供の頃、よく近所のドブ川で遊んでいた僕でもちょっとそれは・・・


そこでなんとなく気になってくる。バングラデシュの上水道はどうなっているんだろう?旅行者ならミネラルウォーターを飲めばよいが、例えば食堂で出てくる料理やコップの水の源はどこなの?池のほとりの茶屋、水道の蛇口あるけど、もしかして「直」?ちょっと心配。いや、かなり不安。
ちなみに首都ダッカの水は水道局が管理する井戸水が9割だそうだ。では地方の水源は川?池?雨水?いろいろ調べて見ると、バングラデシュ(特に地方)では昔は、環境水、すなわち川や池の水を浄化して飲料にしていたのだそうだ。ああ、やっぱりそうか・・・しかし、近年は井戸水に依存する割合が高くなったらしい。他には大きな都市では給水塔なども見かけた。おそらく雨水の貯水だろう。


バングラデシュは水を通じて人々の生活が一本に繋がっているように思える。良いことも、悪いことも水頼み。
この国では未だに衛生管理の不備によって病気が流行ることもある。汚染された井戸水の飲料によるヒ素中毒の被害も発生している。加えて、地球規模の気候変動による異常気象から今までにない規模の洪水が発生し、甚大な被害を受けることも多くなったと聞く。有史以来このデルタ地帯で水に抗わず運命を共にして来たベンガルの人たちも、ついに水をコントロールしなければならない時代に差し掛かったということか。
長雨が続くとある日、僕はバングラデシュの人たちのことをふと思い出すのだろう。



2015年2月記



今日の一枚
” 水の惑星 ” バングラデシュ・ラッシャイ 2015年




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