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長田文克の人類小図鑑 その4


3回に渡って僕の「顔研究」の中間報告をしてきたが、ご理解いただけただろうか?
ちなみに、今まで書いてきたことは何の学術的根拠にも基づいていない(笑)イランやトルコが人類の起源であるなんてこともないのでお間違えなく。ただ、イランを起点にしていわゆる旧大陸の顔の移り変わりを見ると非常にわかりやすい。やはり、イランは自分にとって重要な場所だったんだ。


さて、僕の法則に従って顔立ちを分析すればたちどころにその人がどこの出身であるか解るハズなのだが・・・そんな単純なものではないらしい。僕「もしやあなたはアイルランド人ですか?」男「キミ、何を根拠に言ってるんじゃい。ワシはギリシャ人だよ」という有様。
しかし、顔というのは国境なんか無視して、見事なグラデーションで変わって行く。これだけは確か。喧嘩している隣国の人の顔をよく見ると、自分の顔と似たパーツが多く含まれていることに気づく。ここに無理やり線を引き、対立関係を作り出しているのは人間のエゴなんだね。



おしまいに、イラン人の顔に関するちょっと気になる話を。
イランの街を歩いていて僕はふと気づいた。何故か鼻にガーゼを貼り付けている若者が多い。そのほとんどが女性だったのでいろいろ思いをめぐらせてしまった。「はて?お淑やかに見えるイランの女性たちだけど、実は気性が激しくて女同士で殴り合いの喧嘩をするとか・・・」まさかねぇ。それとも、「あの高貴な鼻はガラスのように繊細で、ちょっと転んで顔面を打っただけですぐに折れてしまう・・・」とか。しかし、これほど鼻骨骨折した人が街に溢れているとしたら、イラン人ってかなり運動神経が鈍い?


気になりだしたら居ても立ってもいられなくなり、聞いてみることにした。公園のベンチで話す女子二人。一人は鼻ガーゼだ。「あのー」サーッ。あっ行ってしまった。この首からぶら下げてるでかいカメラがいけないのかな?
再び芝生の上で談笑する二人組を発見。「えっと、その鼻のガーゼは何?」「????」だめだ言葉が通じていない。何度か失敗を重ねるうちになんだか聞きにくくなってきて、結局そのままになってしまった。


旅も終盤になったある日、ふと思い出して言葉の通じる宿の主人に聞いてみた。「街で鼻にガーゼを貼った人たちをよく見かけるんだけど・・・」すると主人が「あ、あれか。手術して鼻小さくしてんだよ。流行ってるんだよね。クレイジーだろ?イラン人って」いや、別にクレイジーじゃないけどさ・・・ということは美容整形なの?
しかし、宿の主人も当事者ではないのでどこをどうやって小さくしているのかは解らない。果たして鼻骨を削って鼻を短くしているのか、それとも小鼻を切除して細くしているのか・・・どちらにしても・・・ああ、イタリア車のように高貴で流麗なイラン人の鼻が、僕の大好きなイラン人の鼻が・・・。こういう風に皆さん顔をいじり始めてしまうと、研究をしている僕としては結構困っちゃうんですよね。これはサンプル収集を急いだほうがいいのかもしれないな。


それにしても、鼻を小さくする人もいれば、世界の別の場所では鼻を高くする人もいる。まあ、それにとやかく言うつもりはないけど、「理想的な美」ってのは人それぞれなんだねぇ。


2013年11月記



今日の一枚
” ポートレイト ” イラン・エスファハン 2013年




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