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欧米か その2


日本ではよく「欧米」や「欧米人」というけど欧米ってどこのことを指してるのだろう?僕の考える「欧米」の「欧」とは西はアイスランド、ポルトガルから東はトルコ、アゼルバイジャンあたりまで。「米」とは北はカナダから南はアルゼンチンのパタゴニアまでなのだけれど・・違いますか?えー、こういう人を世間は「理屈っぽい人」と呼びます(笑)
その昔「欧米か」というギャグが流行ったけど、すっと理解できて笑えるということは皆の間で「欧米」に対する共通認識があるということなんでしょう。で、「欧米」って?
EU諸国とか北米とかという意味なのか?はたまた「西洋」という意味で用いられているのか。とすれば「欧米」とはかなりいい加減なくくりだ。かといって、例えばテレビのニュースで「欧米各国は・・・」という原稿を几帳面に「イギリス、フランス、ドイツ・・・アメリカ、カナダは・・」と直していたら放送時間に収まらなくなる。
でも本当は、前回書いたように、同じEUの中でもドイツとスペインじゃ人の顔も、考え方も宗教観も社会のシステムも経済の水準も違う。ましてや海の向こうアメリカは全く別ものだ。


テレビを見ていたら「猛暑続きの日本も欧米のように1ヶ月の夏休みが必要だ」と司会者が言っていた。「ほほう(笑)」ひと月の夏休みを取る国民は僕が知ってる限りフランス人ぐらいだ。確かに7月が近づくとパリの町はせわしなくなり、7月末には地中海のリゾートから帰ってくる列車は満席になっていた。でもね、例えばアメリカはどうだろうか?アメリカ人の夏休みは今日の日本人より短い。5日くらいだったような。


このように悪気もなく単なる無知からくるバラエティー番組のコメント程度なら許せる。しかし、欧にも米にも住んだことのない日本の政治家や知識人が「欧米」という漠然とした言葉をちらつかせ民意を誘導するのを見るとなんだかムカっとする。人が何も知らないと思って(笑)
これ、やたらカタカナ英語を使う人たちの絵とダブる。「公約」を「マニフェスト」、合意を「コンセンサス」・・・それほど適切な日本語を見つけるのが苦手ならいっそのこと全部英語で喋ってくれ、紛らわしい(笑)


この「欧米」や「カタカナ英語」に共通する特性は一種の「ぼかし」だ。あえて皆によく解らない言葉を使ってボカすと責任回避できるし、幻想を抱かせることができる。「ドイツではあたりまえ」と言われるより「欧米では常識」と言われたほうがなんとなくまねしなくちゃいけないような気がしてくるでしょ(笑)
幻想。多分、明治維新の頃から、日本はずーっと「欧米(西洋)」という煌びやかな幻想を作り上げて真似し続けてきたんだな、きっと。あっちから拝借、こっちから拝借とやってきたからツギハギだらけ。日本人の昔からの慣習を無視してペタペタと場渡り的に貼り付けてゆくのだから、そりゃ拒否反応もおきますでしょ。結果、欧とも米とも似つかない劣悪な社会福祉や企業偏重の雇用の環境がうまれたりするわけです。本当は日本人自身の頭で考えて変革していかないといけないのにね。


「欧米」ということばを聞くたびに、僕はあの旅先のドミトリーでの会話を思い出す。「西洋人は全部同じ、外人には英語を話しておけばいい」この国ではメディアや政治家まで真面目にそんなことを考えていそうなところがこわい。


2013年10月記



今日の一枚
” ポートレイト ” キューバ・シエンフエゴス 1998年




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