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青い果実


インド・プシュカルのヒンズー教寺院の境内。穏やかな光の中、お参りの女性が二人木の周りを回っている。素足が敷石を蹴る音と彼女たちの身につけた小さな鈴の音だけが静かな境内に響く。
サッサッサッ、チリンチリン、サッサッサッ、チリンチリン・・・
木の周りを一周する度に腰に巻いた袋から小さな果実をひとつ、木の根元に落とす。おそらく、袋の中の果実の数は予め数えてあって、それが無くなるまで回るのだろう。


ヒンズー教と仏教は同じ起源(バラモン教)を持つそうで信仰の様式に共通点がたくさんある。実に興味深い。
そういえば以前、中国・甘粛省の山の上でチベット仏教の巡礼者が仏塔の周りを回っているのを見たな。仏教では確か「コルラ」と呼ばれるお参りの仕方だ。ヒンズー教の呼び名は違うかもしれない。しかし、ここでも同じように巡礼者が木の周りを時計回りに回っている。


お参りが終わると彼女たちは落とした果実を集め、木陰に腰を下ろしてそれをを齧った。通りがかった旅行者におすそ分けをした後、写真を撮っていた僕に向かって手招きをした。片手が一杯の果実を僕はもらった。「コルラですか?」と尋ねると彼女たちはうなずいた。
貰った果実をひとつ齧る。林檎のような若い実は素朴な味がした。


2013年5月記



今日の一枚
” 青い果実 ” インド・プシュカル 2012年




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