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マルチーズ


マルタはマルタ島、コミノ島、ゴゾ島、この3島だけで国を成している。「島」といっても日本列島のような大きなものではない。マルタ島20km、コミノ島3km、ゴゾ島10kmがそれぞれの島の長い部分の直径だ。それぞれの島の間は僅かに2km。マルタとゴゾの間はフェリーでつながっている。1964年英連邦から独立だからマルタは僕と同い年だ。

人々は流暢な英語を話し、TVの電波が入ることからイタリア語もかなり通じる。しかし、彼らの母国語は当然ながらマルタ語(マルチーズ)だ。英語ですべてことが足りてしまったので状況に甘えてしまっていたが、滞在中に少しでもマルタ語を勉強すべきだった。どこの言葉に似ているのだろうか?アラブ?ラテン?ギリシャ?マルタ島に暫く滞在したのに「マルチーズ」と聞いて真っ先に「犬の顔」の方を思い浮かべてしまう自分が情けない。


僕がなぜマルタを旅の目的地に選んだかというと、その島が地理的に面白そうな場所にあるからだ。地中海のど真ん中、イタリアとチュニジアとリビアに囲まれている。事実、マルタは古くから地中海交易の要所だったし、ローマとアラブ双方からの文化の波に洗われてきた。裏を返せば、それはこの島が絶えず外敵の侵攻に脅かされていたことを意味する。首都バレッタがなぜ外壁で囲まれた要塞都市なのか、ということもこの島の場所を考えると容易に理解できる。

人々は敬虔なカトリックで、バスの運転席には聖母の肖像画が飾ってあり、教会は島のいたるところにある。しかし、その一方でマルタ人の顔はアラビックのそれだし、Mosta、Rabat、といったイスラム由来とみられる地名もある。

Mdina(イムディナ)という町を訪ねたあと、僕はふと後ろを振り返った。そこに見たのはイスラム圏の「メディナ(街)」のシルエットだった。


2005年10月記



今日の一枚
”Mdina” マルタ 1994年


1 文化の連続性




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