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ペソかドルか


「これを何ていうか知っているか?これはなあ『紙切れ』って言うんだよ」眉間に皺を寄せながら郵便局員が僕の2ペソ紙幣をつき返した。
えー、状況を説明すると、日本への絵葉書に貼る切手代を尋ねたところ「2(Dos)」という答えが返って来たので、2ペソ出したら局員が突然怒ったという次第で・・・。どうも2米ドル必要らしい。

キューバのペソと米ドルの二重価格制度は非常に解かりづらかった。両替は1ドル=20ペソの固定相場制。たいてい、店員は単位を口に出さない。したがって「2」と言われると、2ペソ(10円)なのか2米ドル(200円)なのかをまず推測しなければならない。エアメールの切手代として僕は10円と推測したが200円だったわけだ。


ハバナでは有名ホテル周辺のレストランで外国人観光客とフニャフニャのピザを食べると5ドルだが、例えば旧市街で一般市民とブヨブヨにふやけた具なしスパゲッティミートソースを食べると5ペソである。フニャフニャもブヨブヨも「まずい」という事実にかわりはないが、500円と25円は大きな違いだ。


数日後、僕は映画館に封切り間もない映画を観に行った。チケット売り場で値段をたずねると、「2」という答え。「映画か。たぶん2ドルだろう」と思い紙幣を出すと、窓口の女性はドル紙幣を突き返し「2ペソ」だと言った。またハズした。 しかし、切手が200円で映画が10円とは・・・ますます頭が混乱する。


市場に南京錠を買いに行く。お金を払う時に値段を聞いたら「3」と言われた。さあ、困った。小さな中国製の鍵は15円にも見えるし300円にも見える。僕はおそるおそる「3ペソ?」と聞く。 おばちゃんはちょっと間を置いてから「ドル」と答えた。


2005年6月記



今日の一枚
”三人の男” キューバ・シエンフエゴス 1998年


僕がKさんと歩きながら話したこと その2




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