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赤組の11月


毎年この季節になると独りよがりのサッカー話になって申し訳ありません(笑)リーグ最終戦は盛り上がりに欠ける引き分け。しかし、今年の浦和レッズはJ1の年間首位を獲得した。若手の台頭もあって今年の浦和のサッカーは面白かったなぁ。このあとはチャンピオンシップを戦わなくてはならない。Jリーグの年間1位から3位のチームがもう一度トーナメントを争い優勝を決めるという不条理なシステムだ。昨年は空席の目立つスタンドに応援に行くもレッズ見事に敗退したのでした。というわけで、今年は行きません。僕的には2016年シーズンは浦和の優勝で幕。


2016年11月は「赤組」の月なのかもしれない。もう1つの赤組とはアメリカ大統領選、共和党の赤である。
ニューヨークの五番街に黄金に塗られたビルがあり、そのオーナー、不動産王のドナルド・トランプを指差して人々は「ああいうお金持ちにはなりたくないね」と嫉妬と皮肉を混ぜて話していた。25年前ニューヨークにいたときのことである。その人が将来アメリカ合衆国の大統領になるなんてあの日いったい誰が予想しただろうか?


そのアメリカ大統領選挙に関する日本のマスコミの報道は異様ともいえる大きな扱いだった。クリントン有利の米大手メディアの分析をそのまま流し、トランプの暴言の端々をかいつまんでは「この人が大統領になったら日本も世界も悪い方に向かうであろう」とまくし立てる。ついこの間までトランプの「ト」の字も知らなかったフツーの日本人が「クリントンが勝たないとまずい」と世間話を始めた。
投票日にはNHKが一日中開票速報をやっていた。この放送局はどこの国の公共放送なのだろうか?同じだけのエネルギーをこの国の政治に対する調査報道にも注ぎ込んで欲しいものだ。開票が進むにつれ日経平均株価が急落、6%近くも下げ翌日には全戻しとなった。欧州や上海はおろか当のアメリカさえこれほどの大変動はしていなかったのに。
開票が終わりクリントンの勝利を予想していた日本のジャーナリストが頭を丸めた。正気の沙汰ではない。同じようにクリントンの勝利を疑わなかった別の評論家は「隠れトランプ」がこれほどいるとは思わなかったと言い訳した。「隠れトランプ」って、それアメリカの全有権者に対する侮辱ですよ。
ノーマークだった次期大統領の下に慌てて当選のお祝いに出向く安倍首相はそういうノリの流れだ。しかもホワイトハウスではなくあの五番街の私邸へ、ゴルフクラブを持って、古いジャンボジェット機で・・・けれども、新大統領の正式就任は来年1月。花束はステージで渡すべきじゃないのかな。楽屋に菓子折りを持って伺う、この行為は一国の元首としてかなり恥ずかしいことなのではないか?


それでは、あなたはトランプの勝利でよかったと思っているのかって?知りませんよそんなこと(笑)僕はアメリカ国民でもなければ、両候補のキャリアも知らないし、公約の全ても知らない、米大統領の政策で自分の生活が変わるわけでもないのだから。ただ、アメリカは反対の意見を持つ者が声を上げられる社会。トランプ氏の政策の問題点もきちんと指摘されるだろう。アメリカというのはそうやってギシギシと左右に振れながら行く道を探って来たし、これからもそうやって未来をつむいで行くんだろうな。
日本は事実を受け止めじっくり観察させてもらえばいい。「地球儀を俯瞰する外交」とは安倍首相の言葉だったですかね。本来はここは俯瞰するところでしょ。ところが五番街のストリートビュー目線になってしまっているところがなんとも皮肉だ。


なお、浦和レッズサポーターの熱烈な応援は米国大統領選とは全く関係ありません。あしからず。



2016年11月記



今日の一枚
” We are Diamonds ” 日本・埼玉スタジアム 2016年




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