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雪雲の色


寒いのが大の苦手である。できれば渡り鳥のような二重生活で永遠に冬をスキップしたい。しかし、ちょっとだけ気になる。一体北国の冬ってどんな感じなのだろうか?なんと人生50年にして初の北海道上陸。それも真冬に(笑)


小樽で数日過ごした。こんな寒い季節に小樽を訪れるモノ好きは僕だけだろうと高をくくっていたがとんでもない。街は外国人観光客で溢れかえっていた。周辺に数多ある良質のスノーリゾートへ向かうローカル列車の車内も実に多国籍な雰囲気。もはや日本の観光地にシーズンオフはないんだなぁ。

人ごみを避けて郊外に足を伸ばすと、やはり人影は疎らになる。小雪舞う漁港には魚網を綯う猟師の姿がちらほら。「北国の冬って雪と氷に閉ざされて生命の温もりさえも感じさせない、いわばモノトーンの世界なんだろうな」などと勝手に思い込んでいた。ところが違うんですな(笑)カモメやカラスは悠々と冬の港を飛び回っている。実に静かで平和な世界が広がっていた。漁船の旗も漁の仕掛けも、降り積もった雪が天然のレフ板になって色鮮やかに映える。そして何よりも僕が感動したのは雪雲に覆われた冬の空の色だった。刻々と表情を変える灰色の雪雲に日の光がブレンドすると、まるでオーロラのようなグラデーションを作る。その空の色を僕はずっと忘れることはないだろう。
地元の人たちも冬の空の美しさをよく知っている。犬の散歩がてらカメラに空の色を収めている。この空の色に出会えただけでも冬の北海道に来た甲斐があったよ。

しかし、それも束の間。吹雪がこちらにやって来るとたちまち「ホワイトアウト」の状態になる。思えば「一日中晴れてた」という日は一度もなかった。天気はめまぐるしく変わり、風景は一変する。冬の北海道を体験しに来た身にはある意味「おなか一杯」という感じです(笑)
ちなみに「寒い」という言葉は旅の2日目に封印した。そんなことは当たり前だからである。



2016年2月記



今日の一枚
” 雪雲 ” 日本・北海道 2016年




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