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小いさな窓の中の少女


フランス・ノルマンディー地方のグランヴィルという町の海岸線を歩いてた時のことだ。ふと誰かに見られているような気がしてあたりを見回す。そして僕は視線の主を見つけた。


家の窓から少女が覗いていた。少女とはいってもそれは塑像である。海岸沿いの家々には同じような小窓があってその中に置かれた塑像は一様に窓の外を見ていた。


伝統的な装飾なのか、はたまた単に流行の飾りつけか、実は今でもわからない。しかし、家のつくりからして既にその塑像を置く窓がつけられているということはおそらく何かの意味があるのであろう。


誰かに尋ねればよかった。しかし、辺りにはだれもいなかったのだ。海から吹きつける風は凍えるように冷たく、細い小道は細く曲がりくねりながら枯れ草の野に続いていた。

2010年2月記



今日の一枚
” 彼女はいつもそこにいた ” フランス・グランヴィル 2000年




fumikatz osada photographie