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夏といえば野外ジャズフェスだった その1


僕が学生だった1980年代、夏といえば野外ジャズフェスティバルの季節だった。折りしも日本はバブル絶頂期で海外のビッグネームがこぞって来日しジャズフェスは盛況を極めていた。その後バブルは崩壊、ジャズ人気も下火になりロックフェスにとって代わられた。


僕の音楽の好みはフュージョン、クロスオーバーに始まり、ストレートアヘッドなジャズに傾倒し、ニューエイジを経てその後ワールドミュージックを聴くようになった。おそらく、あちこちの国々をまわることとワールドミュージックが自分の中で上手い具合にシンクロしたのだろう。それでもジャズは今でも僕の音楽の基本。このサイトのあちこちにジャズに関するフレーズが出てくるのをお気づきの方もいるかもしれない。

そういった自分の音楽的志向に大きな影響を与えたのが、80年代毎年7月末に行われていた「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」という野外ジャズフェスティバルだった。1977年に始まった当初は田園調布の「田園コロシアム」で行われていたそうだが、残念ながら僕はその時代を知らない。したがって、僕が通ったのは東京・稲城市の「よみうりランドEAST」の時代ということになる。いずれにせよ「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」は日本の野外ジャズフェスの草分け的存在だった。


当時のパンフレットのページをめくる。実にバラエティ豊かなアーティストたちが参加している。ジャズという範疇にとらわれない。そこがこのコンサートのセールスポイントでもあった。マイルス・デイビスをはじめソニー・ロリンズ、チック・コリア、ウェイン・ショーター、マイケル・ブレッカー、ロバータ・フラック、ビル・ラズウェル、韓国のサムルノリ、インドのシャンカール。フェスティバルの歴史を遡ればジャコ・パストリアス、ハービー・ハンコック、ジョー・ザヴィヌル、ジョン・マクラフリン、渡辺貞夫といった面々、そしてボッサの女王エリス・レジーナまで出演者に名を連ねる。残念ながらCD化されていないが、このフェスティバルから生まれたレコードの名盤もある。

思い出せば懐かしい。野外ステージの演奏に酔いしれた夏の夕暮れ。芝生席ではウィスキー片手にタバコを咥えて踊っているお姉さんたちがいた。かと思えば、突然の豪雨でずぶ濡れになったり、PAに落雷があったり。「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」は実にいろいろなハプニングがあった(笑)そういった野外ならではのハプニングを含めてこのジャズフェスティバルが独特の雰囲気を持っていたのは確かだ。

既にマイルス・デイビスのトランペットは往年のハードブロウではなかったが、それでも蒸し暑い日本の宵のステージにマイルスが登場しミュートトランペットのサウンドがPAから聴こえてくると、僕は鳥肌が立つような感動を覚えたのであった。

2009年7月記



今日の一枚
”セカンド・セッション” アメリカ・ニューヨーク 1992年




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